小野登志郎のブログ

出版・ウェブの制作会社(株)小野プロダクション代表で、ノンフィクション・ライターの小野登志郎です。徒然にゆる~く書いていけたらと思ってます。

2012年09月

▼第13号
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                       2012/09/27
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  ノンフィクション・ライター小野登志郎のメールマガジン
    ~牡羊座が見たディープな出来事とスターたち~

Vol.13

毎週木曜日発行
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【今週の目次】

1. 【中国VSベトナム、ベトナムの南沙諸島実行支配戦術とは】
  尖閣列島を巡る日中の確執に大きなヒントを与える南沙諸島問題
  ベトナムが実効支配する南沙諸島シン・トン島の生活
2. 【わたしが出会った北朝鮮人】
  悪いのは金正日だ~脱北者夫妻が語る“将軍様”  
3. 【木嶋佳苗が意識した「全人類レベルで屈指」の芸能人「恭子さん」】(高橋ユキ)
4. 【ジャニーズの今と未来】(KAZMA) 
5. 【中国・台湾の芸能最新事情──日本に「華流」「台流」ブームは来るのか】(松野幸志)
6. 【太田出版書籍編集長に聞く、サブカルとメジャー】
  「いまだにメジャーとかマイナーとか本気で言うまともな出版人はいない」
7. 【北米からの手紙】(内藤茗)
  『アメリカから見た「アジアの純真の功績と空席」』
  「K-POP」すら呼称の定着もおぼつかないのに、堂々とやってのけてしまったのが「PSY」
8. 【建築、よもやま言いたい砲題】(松田健嗣)
   地上の星座「私だけが知る東京の『隠れた』パターン」 
9. 【南町同心書留――武田家再興計画】(横山茂彦)
10.【オムニバス小説 あわいの小骨】(伊藤螺子)
  第11回『映画』
11.【東方神起とJYJについて】
12.【続・龍宮城 果てしなき日中闇のオセロゲーム】
  中国上海の日本人「蟻族」(ワーキングプア)2
13.【編集後記】  

ご購読はこちらからお願いいたします→
http://www.mag2.com/m/0001552211.html 

 中国で「反日デモ」が過激化している。日本車、日本料理店、日系デパート、日系企業の工場などへの襲撃が相次いでいる。普段、少しくらいの騒動であれば涼しい顔をしている在中日本人も「今の雰囲気はこれまでとは違う」とこぼしている。

 その反面、少なくない数の中国ウォッチャーが「官製デモ」を指摘しており、中国政府によって容認・コントロールされた反日デモである可能性も高い。9月16日現在日本人の死者・重傷者は出ていないが、このまま犠牲者の無いまま事態が収束して欲しいものだ。


 今回は、その中国で成功するという覚悟を決めて、努力をしている日本人俳優の話をしたいと思う。


 まだ私が北京にいた頃、とある日本人が主催する舞台の手伝いをした事がある。そこで知り合った俳優志望の日本人が言った言葉は今でも忘れられない。

「俺は日本兵役をやらずに中国で役者として成功して見せる」

「日本兵役?」と思う読者もいらっしゃるかもしれないが、中国では未だに日中戦争をテーマにした「抗日ドラマ」がこれでもかというくらい頻繁に放送されている。日本人と知り合う機会のある都市部や観光地の中国人は別として、田舎の中国人の「日本人像」は学校教育と、この「抗日ドラマ」で形作られる側面がある。実際、煽られて反日デモに参加している人達はこういったものに強い影響を受けている人が多い。


 私も中国の田舎で知り合った中国人の家にお呼ばれしたら、おじいちゃん・おばあちゃんが「抗日ドラマ」を楽しそうに見ていて、その状態で食卓を囲むという気まずい経験や、長距離列車の中で隣の中国人に話しかけられて「生の日本人を見るのは人生で初めてだ。(抗日)ドラマで見る日本人とはまたえらく違うな」なんてことを言われた事もある。


「抗日ドラマ」に出てくるステレオタイプな日本兵(将校)は小太り・ちょび髭という格好で、強盗・暴行・拷問・レイプなど悪行三昧の絵に描いたような悪役だ。


 多くの中国人が知っている日本語は、実は「こんにちは」「ありがとう」ではなく、「ミシミシ(飯、飯)」「バカヤロウ」。これは抗日ドラマに出てくる暴力的な日本兵が口にしていたセリフであり、私自身も中国の田舎で「お前日本人か!俺、日本語話せるぞ。ミシミシ・バカヤロウだろ」と言われたのは一度や二度ではない。多くの場合、本人たちには悪意がなかったりするからたちが悪い。「ところでバカヤロウってどういう意味だ?」なんて事を平気で聞いてくる。「ミシミシ(飯、飯)」は悪役である日本兵が中国の民家に土足で踏み込んで「さっさと飯を出せ!」という暴力的な場面で使われる事が多いようだ。

 
 この「ミシミシ(飯、飯)」の中国での浸透度が分かる事例として、過去に日本の偽造パスポートを使ってアメリカに不正入国しようとした中国人が、入国審査で「日本語話せるか?」と聞かれて「YES、ミシミシ」と答えてばれたという嘘の様な本当の話がある。

 
 中国で既に成功している日本人としては、矢野浩二氏という「中国では一番有名な日本人俳優」がいる。日本では俳優として成功せず、中国に渡って来たばかりで仕事の無い時期には、上記のようなステレオタイプな日本兵を演じていたが、現在ではその枠を出た様々な役を演じており俳優として成功している他、中国で最も有名なバラエティ番組「天天向上」のレギュラー出演者の座を得ている。

 この番組は6人の司会者達が、週ごとのテーマに沿ったゲストとのトークやショートコントを繰り広げる人気番組で、中国では2億人から3億人の視聴者がいると言われている。彼はその番組の司会者の一人として活躍し、2008年には中国の雑誌「新周刊」によって娯楽司会者賞を授与されている。


 今年末にはビビアンスーも11年ぶりに出演する日本ドラマ「金田一少年の事件簿 香港九龍財宝殺人事件」にも出演予定であり、中国で最も成功した日本人の一人と言えるかもしれない。


 それでも、これまで抗日ドラマなどで多くの日本兵役を演じてきており、中国人の中ではその「日本兵」のイメージもかなり強い事は確かだ。


 中国での成功者としては、彼の他にも俳優ではないが「中国で一番有名な日本人」と称して日中両国でコラムニストとして活躍している加藤嘉一氏がいる。北京大学のいち留学生として中国での生活をスタートさせた後、反日デモに参加した事をきっかけに中国・香港メディアで発信するようになり(公式HPの情報によれば)最盛期には年間300本以上の取材を受け、200本のコラムを書き、テレビでもコメンテーターとして活躍し、現在では中国版ツイッターでフォロワー150万人以上を有するに至っている。


「日本人として中国で中国人向けに発信する」という点が彼が注目された理由でもあるわけだが、中国で日本の批判をしながら、日本では中国の問題点を指摘するという立ち位置からか、多くの支持者を持つ反面、日中双方で批判を受ける事も多い。こういった批判に対して彼は「(日中に情報発信するという)土俵に立つ事が大事であり、そのためにも、日中双方で発言が違うのは仕方がない」という主旨の反論をしている。が、見方を変えれば自己の成功のために日中それぞれで調子のいい事を言っている様にも見える。

 前述の舞台で知り合った俳優の方々に聞いた話だが、日本の有名俳優ならともかく、駆け出しの俳優にオファーされるのは未だに「日本兵役」であり、中には既に日本兵役を演じたことのある方もいた。ある意味、先駆者である矢野氏の作った成功への道とも言えるかもしれない。が、彼らの思いがどうあれ日本から見てみれば、見方によっては「売国奴」という人もいるかもしれないし、成功のために中国側に迎合した「政治の道具」という人もいるだろう。


 冒頭で紹介した彼の「俺は日本兵役をやらずに中国で役者として成功して見せる」 という言葉はこういった背景から来ている。彼の言葉からは「俺は政治の道具にはならない」という強い思いを感じた。将来、俳優として成功したとしても、「過去に日本兵を演じた。政治の道具になった」という事実は消えないという事を、先駆者たる矢野氏を見て感じたのだろうと思う。


 中国人など外国人に日本に対するイメージをつくるのは何も政治家や知識人だけではない。表現者として俳優を含む芸能人の影響は計り知れない。そういう意味でも彼のような人間が増えるということは日中関係にとっても重要なことであると思う。


 もちろん中国という国で、彼のような「政治の道具にはならない」という信念を持った挑戦者が成功するためには、越えなければならない壁が数多く存在するだろう。それに対して彼は「だからこそ私はオンリーワンになれる」と清々しさを持った表情で語っていた。

 私は常々、国家間の新たな関係は新たな挑戦者が作ると思っている。実際、矢野浩二氏は「抗日ドラマにおけるステレオタイプの日本兵」のイメージを変えたという評価を受けている部分もあり、加藤嘉一氏に関しても彼の書いたコラムによって日本の新たな側面を知った中国人も少なくない。彼らの挑戦が与えた影響は確かに大きい。大きいがそのために中国に売り渡したモノもあったのも確かだ。だからこそ、強い信念を持った彼のような挑戦者こそが、これからの日中の新たな関係を作っていくのは間違いないだろう。

■松野幸志:台湾在住のフリーライター。
一年前までは北京に長期滞在の中国通。
ツイッター 
https://twitter.com/matunokouji 

(有料メルマガ
http://www.mag2.com/m/0001552211.html 2012年9月20日号に掲載した記事です)

▼第12号
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                       2012/09/20
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  ノンフィクション・ライター小野登志郎のメールマガジン
    ~牡羊座が見たディープな出来事とスターたち~

Vol.12

毎週木曜日発行
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【今週の目次】

1. 【荒れ狂う中国「反日」デモ、その背景にある中国共産党VS中国民族主義】
  衰退する中国共産党と勃興する中国民族主義
2. 【六本木クラブ『Flower(フラワー)』集団暴行死事件3】
  無数に散乱分布する「実行犯」情報
    「それだけ潜在的に類似犯行グループが存在しているということ」
  絞り込まれた犯行グループ 「証拠は? 自供は取れるのか?」
3. 【わたしが出会った北朝鮮人】
  朝鮮族農場で働く出稼ぎ“北”の夫婦との出会い
4. 【「ギャル」専門雑誌編集者に聞く、ギャルの時代が終わった今のギャル】  
5. 【韓流爺やの韓国エンターテイメント散歩】(浪城暁紀)
6. 【完全無視された、エイベックスへの質問状】  
7. 【中国・台湾の芸能最新事情──日本に「華流」「台流」ブームは来るのか】(松野幸志)
  中国大陸で活躍する日本の芸能人、その苦悩と可能性
8. 【建築、よもやま言いたい砲題】(松田健嗣) 
9. 【南町同心書留――武田家再興計画】(横山茂彦)
10.【オムニバス小説 あわいの小骨】(伊藤螺子)
11.【東方神起とJYJについて】
12.【続・龍宮城 果てしなき日中闇のオセロゲーム】
  中国上海の「日本人ワーキングプア(蟻族)」
13.【編集後記】 

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・ディズニー戦略が生みだす「永遠の若さ」というひずみ

 さて、ディズニー社はテーマパーク経営、ディズニー映画の制作がもちろんよく知られてますが、アメリカではABC、ESPN他、子供向け放送局のDisney Channel、Radio Disney、レコード会社も保有するマルチメディア企業。ですが、私はディズニー社は単なる企業というより、王族の居ないアメリカの「夢の王国」でもあるような気がしています(このあたりにSMエンターテインメント社も倣っているところがありそうですね)。

 それはディズニーの制作物、アイドル戦略に端的に現れている気がします。前回も少し書いていますが、子供向けのプログラムでは性的表現、暴力などを極力排除した「安全な」番組を制作することは基本です。なかには、子守がわりにテレビをつけておくという親も居るアメリカですから、「ディズニーチャンネル見てるなら、とりあえず安心」みたいな感覚も根強い。

 もちろんディズニーチャンネルの放送する番組でも悪ガキ的なキャラクターも登場します。でも、ここがポイントなのですが、劇中、悪っぽいキャラクターを演じていても、普段は「品行方正」というイメージがディズニーアイドルの共通項。私生活でもクリーンで道徳的な、ロールモデルであることがお約束です。私生活すら、「演じ」なくてはならない。彼らには二重のタガがかけられているとも言えます。

 そしてモラルとともにディズニー王国の打ち出すもうひとつの大きなメッセージが、「若さの圧倒的な価値」。番組をとおして繰り返し伝えられる「青春のきらめき」。主人公は老いや死とは基本的に無関係です。アイドルたちはいつも若く、溌剌として美しい。この永遠の若さへの希求という部分に、でも「使い捨てアイドル」たちが成立していきます。まるで、マンガのキャラクターのようにディズニーチャンネルの番組に次々に登場する「新しいキャラクター」達。その分古くなったおもちゃを捨てる感覚で捨てられていくアイドル達もいるわけです。

 こうやって消費されていくアイドルのなかには、ディズニー社の品行方正イメージと本当の自分の姿のギャップに傷つき、摂食障害や自傷行為に陥って番組を降板したアイドルも居れば、しみついたディズニー臭からなかなか脱皮できずに苦しむ脱退組も実は多い。ディズニー王国の外側では、そのブランド力が仇になってしまうのですね。それは、彼らの提供する娯楽が「子供に特化していること」そして、一般的に大人は子供向けに対し「リアルでない」と判断すること。「ティーン・ポップは本当に使い捨て」と一般的にもよく言われています。

 じゃあ、なぜこれが許されているのか? 

 ディズニードラマを見ていたら、答えがそこにあることに気づかされます。ドラマの中にはティーンエイジャーの主人公の親や、学校の教師として中年の男女が割合頻繁に登場するのですが、中高年の役回りはほぼ100%「笑い」の対象です。リスペクトもなければ、年老いることは「かわいそうで、面白い」(ヒドイです。オバサンちょっとムカつきました……)。 

 この点、ディズニー王国は実に忠実に外の世界の価値観を反映してもいます。永遠の若さの夢、それは米国人が常に追い求めるものでもあるからです。子供の世界を脱出して大人の「リアル」、成熟を標榜するものの、結局バイアグラとシワ取りに汲々とする米国人。ディズニー社は米国人の価値観に非常に深く食い込んでいる、と私は考えます。

 24歳になったジョナス・ブラザースの長兄ケヴィンは、この秋から放送の「Married to Jonas」というリアリティー番組で、今度は自分の結婚生活を暴露する模様です。果たして彼の「リアル」は「童貞幻想」を超えられるか? 一体どんな結婚生活なんでしょうか。ケヴィンは本当はカエルだったのか?「持続可能」なアイドルとして彼がやっていけるかどうか、が見所でしょうか……。

 おとぎ話のカエルの王子様はプリンセスのキスで王子にもどりますが、ディズニーのライバル会社「ドリームワークス」製作の人気アニメ『シュレック』では王族の本当のアイデンティティーこそがカエル、なんですよね(笑)。
(了)


ライター 内藤茗(ないとう・めい)
米国在住。ポップカルチャー全般が好きな二児の母&学生。
趣味:オタクの生態観察とつべめぐり。英-日翻訳者。

(有料メルマガ
http://www.mag2.com/m/0001552211.html 2012年8月30日号にに掲載した記事です)

・アメリカンアイドルたちの「処女幻想」と「童貞幻想」

 こちらは涼しくなってきましたが、ニッポンは色々と「熱い」みたいですね?

 SMエンターテインメント社とディズニー社のアイドル達について比較してみよう! と考えてたら、先日書いた中でちらっと出てきたジョナス・ブラザースについて思い出しました。それは彼らが『童貞王子様』だった事なんですが、興味あります? ふふふ。

 ですので、『王子様の童貞ごっこ-ファンガールに愛の花束を』というタイトルで今回は行ってみたいと思います。

 2008年、『Purity Ring』事件は発生しました。日本で報道されましたか? 2005年デビューのディズニー社のボーイバンド、ジョナス・ブラザース。その頃人気絶頂の彼らが、自分たちの「純潔」を象徴する指輪を身に付け、それをコンサートやメディアで告白しちゃった。王子様は童貞、です。

 もちろん米国はクリスチャン国家なので童貞も処女と同じく大切なものだから、できるだけ取っておけばいいんじゃない、という意見も普通にあります。第一、言葉も男女共通に「virgin」ですし。童貞に対してそれほどにネガティブなイメージは無い。宗教的な価値観から、処女性と結婚、結婚とセックスと愛、これらの乖離は日本のようには進んでいないということも有ります。

 また童貞カミングアウトの前段として、ブリトニー・スピアーズやらクリスティナ・アギレラなどによる「処女宣言」ブームが有ったことは確かです。長らく「性の解放」という一方向に向かってきたアメリカ。性行為の経験年齢がどんどん下がり、十代の妊娠、性行為感染症が非常に増えた、そのようなネガティブな現象に対しての反動として、クリスチャン右派が保守的な性と結婚への価値観を打ち出す。アメリカは9/11後、「安全は自由に勝る」という言葉どおり、保守的な方向に向かっていきましたし。そしてジョナス兄弟の家庭の宗教はエバンジェリカルという、プロテスタントのなかでも、強力に保守的な一派です。

 とまれ、ジョナス兄弟が左手薬指につけた指輪はプリ・ティーン、ローティーンの少女たちと、保守的な母親層には強烈にアピールしたのでした。純潔の伝道師ジョナス・ブラザースのコンサートはお高く、キャラクター提携のジュニアファッションライン、キャラクター文具などの商品も消耗品としてはお安くはない。もちろんリング自体も流行りまくり。これでモラルや安心が買えるならお安いもの? でも、これが成立するためにはひとつの前提が必要でした。

 それは、実は彼らこそ「性的な幻想を売る存在であった」という事実ですね。要するに、もし彼らが年若い女の子達に対してセックスアピールを放つアイドルという存在でなければ、「童貞だろうがなんだろうが、どうぞご勝手に」と言われてしまうだけじゃないですか? 童貞なんて、超個人的なことをなんでわざわざ表で言う必要があるの? と、こう暴いてしまったのが、過激アニメ番組で有名な『サウス・パーク』です。

 このサウスパークの『ザ・リング』エピソードを簡単にかいつまんで言うと、主人公のケニーは同級生の女の子とヤリたい。女の子を「ソノ気」にさせるには、アレしかない! と、一生懸命苦労してジョナスコンサートのチケットを取り、コンサートデートへ。彼女をジョナスでコーフンさせたらドーテー捨てられるかな、ヤレるかなと激しく期待。しかし期待は見事はずれる。『純潔リング』が登場しちゃったからなのだった、ちゃんちゃん、というお話です(笑)。

 ジョナスファンガール、と呼ばれた少女たちがいました。いわゆる一般の少女ファンとは一線を引かれた熱狂的ファンの彼女たちの特徴は「ブサイクでデブ」。一昔前のジャニヲタがそんな風に言われてましたよね? たぶん、いや絶対に処女、とメディアにもからかわれている。日本に比べ、一般的にはやはり早熟なアメリカのティーンエイジャーですから、処女の価値をいくら大人が認めても、やはり「処女=モテない」というプレッシャーは大きい。

 そこに降臨した救世主が「童貞」の王子様だったわけです。超人気者のイケメンアイドルが売る極めてクリーンな性的幻想は「Too good to be true…」(素晴らしすぎてありえない)。そう揶揄されてはいたのですが、あくる年、2009年には長兄ケヴィンが電撃婚約、続いて次兄ジョーがアシュリー・グリーン(トワイライト女優)とロマンス報道、それはやっぱりありえなかった、と気づかされた少女たち……。

 必要かつ真実だったのは、あくまでも少女たちの性的興奮剤としての彼ら(つまり消費の動機づけ)、かつ少女たちの「処女性」(つまり、親の財布の紐を緩めるための理由)であって、本当に彼らの「童貞性」なんて気にしていたのはファンガールだけだったのかもしれません。今でも時々見かけます。本当に裏切られた気分だった、と元ファンのジョナスゴシップ記事に対する書き込みにはあります。

 彼らの人気はこの2008年を頂点に2009年以降は下がり始めました。彼らも人間ですから、恋愛もするでしょうし、大人になっていく。いつまでも「童貞王子」でいられなかったという「リアル」な現実。そしてこの「童貞ごっこ」によって「ボーイバンドは大人には向かない」という、北米市場における予定調和のようなサンプル事例になってしまったんじゃないか、と思うんですよね(しかもこのあと、アメリカには空前の「ティーンマム」(ティーンエイジャーママ)ブームが来ちゃいますし)。
(つづく)

■ライター 内藤茗(ないとう・めい)
米国在住。ポップカルチャー全般が好きな二児の母&学生。
趣味:オタクの生態観察とつべめぐり。英-日翻訳者。

(有料メルマガ
http://www.mag2.com/m/0001552211.html 2012年8月30日号に掲載した記事です)

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