・ディズニー戦略が生みだす「永遠の若さ」というひずみ

 さて、ディズニー社はテーマパーク経営、ディズニー映画の制作がもちろんよく知られてますが、アメリカではABC、ESPN他、子供向け放送局のDisney Channel、Radio Disney、レコード会社も保有するマルチメディア企業。ですが、私はディズニー社は単なる企業というより、王族の居ないアメリカの「夢の王国」でもあるような気がしています(このあたりにSMエンターテインメント社も倣っているところがありそうですね)。

 それはディズニーの制作物、アイドル戦略に端的に現れている気がします。前回も少し書いていますが、子供向けのプログラムでは性的表現、暴力などを極力排除した「安全な」番組を制作することは基本です。なかには、子守がわりにテレビをつけておくという親も居るアメリカですから、「ディズニーチャンネル見てるなら、とりあえず安心」みたいな感覚も根強い。

 もちろんディズニーチャンネルの放送する番組でも悪ガキ的なキャラクターも登場します。でも、ここがポイントなのですが、劇中、悪っぽいキャラクターを演じていても、普段は「品行方正」というイメージがディズニーアイドルの共通項。私生活でもクリーンで道徳的な、ロールモデルであることがお約束です。私生活すら、「演じ」なくてはならない。彼らには二重のタガがかけられているとも言えます。

 そしてモラルとともにディズニー王国の打ち出すもうひとつの大きなメッセージが、「若さの圧倒的な価値」。番組をとおして繰り返し伝えられる「青春のきらめき」。主人公は老いや死とは基本的に無関係です。アイドルたちはいつも若く、溌剌として美しい。この永遠の若さへの希求という部分に、でも「使い捨てアイドル」たちが成立していきます。まるで、マンガのキャラクターのようにディズニーチャンネルの番組に次々に登場する「新しいキャラクター」達。その分古くなったおもちゃを捨てる感覚で捨てられていくアイドル達もいるわけです。

 こうやって消費されていくアイドルのなかには、ディズニー社の品行方正イメージと本当の自分の姿のギャップに傷つき、摂食障害や自傷行為に陥って番組を降板したアイドルも居れば、しみついたディズニー臭からなかなか脱皮できずに苦しむ脱退組も実は多い。ディズニー王国の外側では、そのブランド力が仇になってしまうのですね。それは、彼らの提供する娯楽が「子供に特化していること」そして、一般的に大人は子供向けに対し「リアルでない」と判断すること。「ティーン・ポップは本当に使い捨て」と一般的にもよく言われています。

 じゃあ、なぜこれが許されているのか? 

 ディズニードラマを見ていたら、答えがそこにあることに気づかされます。ドラマの中にはティーンエイジャーの主人公の親や、学校の教師として中年の男女が割合頻繁に登場するのですが、中高年の役回りはほぼ100%「笑い」の対象です。リスペクトもなければ、年老いることは「かわいそうで、面白い」(ヒドイです。オバサンちょっとムカつきました……)。 

 この点、ディズニー王国は実に忠実に外の世界の価値観を反映してもいます。永遠の若さの夢、それは米国人が常に追い求めるものでもあるからです。子供の世界を脱出して大人の「リアル」、成熟を標榜するものの、結局バイアグラとシワ取りに汲々とする米国人。ディズニー社は米国人の価値観に非常に深く食い込んでいる、と私は考えます。

 24歳になったジョナス・ブラザースの長兄ケヴィンは、この秋から放送の「Married to Jonas」というリアリティー番組で、今度は自分の結婚生活を暴露する模様です。果たして彼の「リアル」は「童貞幻想」を超えられるか? 一体どんな結婚生活なんでしょうか。ケヴィンは本当はカエルだったのか?「持続可能」なアイドルとして彼がやっていけるかどうか、が見所でしょうか……。

 おとぎ話のカエルの王子様はプリンセスのキスで王子にもどりますが、ディズニーのライバル会社「ドリームワークス」製作の人気アニメ『シュレック』では王族の本当のアイデンティティーこそがカエル、なんですよね(笑)。
(了)


ライター 内藤茗(ないとう・めい)
米国在住。ポップカルチャー全般が好きな二児の母&学生。
趣味:オタクの生態観察とつべめぐり。英-日翻訳者。

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http://www.mag2.com/m/0001552211.html 2012年8月30日号にに掲載した記事です)