■非正規労働者に酷いサムソン、現代

 韓国で最高の利益を出しているサムソン電子。その秘密はトヨタ方式も顔負けの徹底した下請け絞りと、騙しまがいの“非合法”な非正規労働者の“活用”でもあるようだ。

 パク・ミンジュさん(23歳・仮名)という、非正規で働く女性からサムソンについて驚くべき話を聞いた。

 彼女もまた前出のキムさんと同じく学生ローンの返済に苦しんでいた。そんなパクさんの携帯にsる日突然電話が掛かってきた。

「学生ローンに苦しんでいるのでしょう。私はサムソンの労務担当だが、いい仕事を紹介しますよ。サムソンで働けば正規労働者でも月に20万wにはなりますよ。一度働いてみませんか」

と、その電話の声は囁いた。そんな上手い話があるはずは無いと思いながらも、月2百万wの賃金の魅力に磁石のように引きつけられた。そして、気が付けば待ち合わせの場所と時間を聞いていた。

 翌日指定された場所に行くと、電話をしたという男が現れた。その男は挨拶もそこそこに、パクさんをマイクロバスの中に押し込んだ。中にはパクさんと同じ年頃の青年達が何人も乗っていた。何の説明も無く、バスが走り出す。1時間ほどして着いたのはソウル郊外にあるサムソンの工場だった。

 そこでいきなり働けと言うのだ。“拉致”まがいの連行に疑問を感じつつも、しかたなく工場の生産ラインに着いた。監督らしき人物の説明を聞き作業を始めた。作業はIT基盤らしきものにハンダ付けする簡単なものであった。とにかく、その日は働いた。仕事が終わると事務所に連れて行かれ“契約書”のような物にサインをさせられた。そこには確かに月に2百万wと書かれていた。しかし、同時に契約を一方的に破棄した場合は、違約金を取ると明記されていた。しかし、その時はあまり気にもしていなかった……。

 

そして、サムソンの工場にマイクロバスで通う日々が続いた。10日くらいが過ぎた朝、突然電話が掛かってきた。


「今日は来なくていい。明日はどうか判らないが、とにかく待機するように」

という指示だった。その時はそんな物かと思っただけだった。

 その後も、仕事の不定期化は続いた。月に20日間働ける月もあったが、平均すると月の平均労働日は10日を僅かに出るくらいだった。結局、月の収入は100万wにも満たなかった。

 仕事を差配していた男に抗議すると、契約書をたてに違約金を払わせるぞと脅かされた。こうして瞬く間に1年が過ぎていった。生活はアルバイト時代よりはるかに苦しくなっていった。たまりかねたパクさんは、先輩が属する民主労組に相談に行った。民主労組はすぐに対応してくれ、その手配師まがいの男に電話し「提訴するぞ」と抗議した。すると、まもなく電話での連絡が取れなくなった。彼の携帯電話はどうやらプリペイド式のものであったようだ。民主労組が、直接サムソンに抗議すると、サムソンから帰ってきた答えは、そんな男のことは知らない」の一点張りだった。「契約通り、ちゃんと月200万wの賃金を払え」と要求すると、サムソン側は、「それはその会社の責任だ。我々の関知する所ではない」と突っぱねてきた。水掛け論の果てにパクさんは疲れ果てて,ついにこの一件を放棄してしまった。

 こうした、訳の判らない手配師を使った人集めは、サムソンだけでなくLG,現代などでも日常茶飯事に行われていると言う。彼らは、自分の都合に合わせて若者を使っているのだ。そして、こうしたことがまた、サムソンの利益を生む。言い換えれば、サムソンの繁栄はこうした青年層を不当に扱うことで生み出されている側面もある。

 パクさんは「上手い話に騙された自分が浅はかだった、サムソン関連の仕事は今後一切嫌だ」と言い切った。その声は疲れ果てていた。
(つづく)

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